理論
大学は物理学を専攻した。
専門は多体素粒子論、統計素粒子学ともいう。
実験屋ではなく理論屋だ。
簡単なところでは、超伝導の話があり、低温物理学の話が初級となる。
わらわれがいる通常の空間では、四次までの波動関数に畳み込まれる。
一般的に現象学としての物理学や数学は、高校まであつかうユークリッド幾何学で成立している。
しかし、これを粒子レベルの極小空間、惑星レベルの大空間に当てはめると、途端に揺らぎや誤差が生じる。
かつては観測機器の誤差と思われた部分は、ユークリッド幾何学が支配する空間では説明できないことがわかってきた。
マックスウェルの登場により、非ユークリッド幾何学での電磁気学が成立したことで、古典物理学は終焉する。
アインシュタインは量子力学の発端を担ったわけだが、彼自身は確率や虚数空間を扱う量子力学を認めていなかった。
非ユークリッド幾何学、虚数空間の数学的解釈が進むにつれ、物理学が成立する現空間にも虚数が存在していることがわかってきた。
実際、虚数が説明できる物理現象として有名なのは、トンネル効果であったり、真空に発生する粒子だったりする。
20世紀の初頭、物理学のパンドラボックスが流行した。
シュレティンガーの猫。
放射性物質の原子崩壊はまさに確率に支配されている。
中が見えない箱に、猫と放射性物質を入れる。
ふたを閉めてしまうと、猫の生存は「人間が観測していない状態」になる。
箱を開けるまでは、猫は生きているのか死んでいるのかわからない。
生死が人間の観測にゆだねられるというのである。
しかし、それはあくまで観測者である人間が知るかどうかであり、人間が見ていない「街角にいる猫の生死」と同じで「箱の中の猫の生死」も確率に支配されている。
現代物理学の常識として、観測は物体に対しての物理的作用であり、観測もまた物理法則に支配されているものである。
観測者は神ではない。
哲学者は言う、月は人間が見ているから存在していると、見なければその存在はわからない。
しかしそうではない。
月は物理法則に支配され存在している。
存在は確率に支配されているが、存在しているからこそ観測できるのである。
宇宙を支配する数学は、人間が考え出した記法に過ぎないし、それが支配する宇宙の内側しか知ることができない。
しかし数学は、別の宇宙の存在を示唆している。
また数学ではない別の記法が支配する別の空間も存在しているのかもしれない。
しかしそれを知るすべはない。